在りし日の
そう、あの日も私は暗い土間のような所に押し込められました。
誰が、何が悪いとかじゃなくて、全部自分の愚図さの所為でした。
五歳も歳の離れた妹に出来ることさえ往々に出来ず、言われたことも、言中に出さなくても悟らなくてはならなかったことも悟れない無能を知らしめさせる為の罰でした。
私は自分の駄目さ加減に呆れながらも、どんなに努力しても駄目なんだという卑屈な意識から叱責される状況を甘んじて受け入れているような節がありました。
薄暗い物置のような場所で、じめじめと湿った冷たい土に直接座るしかなく、夏でも薄ら寒い其処では体を丸めてじっとしていることしか出来ません。
大きなムカデが足元を這っているのを見てびくりと体を強張らせながら、私は只々時が過ぎるのをひたすら待っていました。一時間や二時間では出されることなどないのを知っていましたから、私は楽しいことを空想をしたり、柱の木目を意味もなく数えて時間を潰していました。
いつもならそのまま半日か一日ほど放置されてから出されるのが普通でした。
閉じ込められてから数十分後、いつもなら決して開かぬ筈の扉が開けられたのです。
暗闇に射し込んだ急な光に顔を庇うように手を翳すと、その手首を掴まれて思い切り引き倒されました。
泥に白い衣服を汚して顔を上げると、逆光の中に二人の人影が。扉は直ぐに閉められて、室内には再び闇が充満しました。
それから、 地面に手をついた私の上に誰かが圧し掛かってきたのです。
私は何が何だか判らなくて、父の新手の折檻かとも思いましたが、しかし私に圧し掛かった人は私を殴るでも蹴るでもなく、服の下にその冷たい手を滑り込ませて弄り始めました。
私は何だか恐ろしくなって、しかし竦んでしまった喉からは引き攣ったような空気しか漏れずに、体を僅かに捩るだけの抵抗しか出来ませんでした。
いえ、しなかったのでしょう。
私はココでもいつもの諦め癖が出たようで、この折檻が終わるをじっと待とうと思ったのです。それが、結局は自分が一番傷つかない方法だと知っていたからです。
しかしココでは抵抗をするべきでした。本当に、後悔しています。
「抵抗しないんですねぇ…ヒナタ様?私のような下賎の者に触れられても」
低い声に、卑屈な響きを何となくですが感じ取りました。私が言うのもなんですけれど…
聞き覚えのある声に良く顔を見てみると、鷲鼻が目立つ、名前も知らない屋敷の使用人でした。
「慣れてるんじゃねぇのか?役に立たないからって、お父上に使われてそうじゃねぇか」
残りの一人の頭にバンダナを巻いた人も、屋敷の何処かで見たことのある、しかし何処で見たのかも思い出せないような人でした。
私に圧し掛かっている人が私の上着の裾を掴んで思い切り上に引き上げました。続けざまに、黒のアンダーシャツも。
「うっわデケェー、巨乳チャンじゃん。着痩せするんだなー」
「…ひっ…」
乱暴に、その…胸を鷲掴みにされ、バンダナの人にはショートパンツを下着ごと剥ぎ取らたんです。
「い、いやっ…厭ですっ!…や…止めてください…お願いですから!!」
その事には流石の私も怖さと嫌悪感が限界を超えて、バタバタと手足をばたつかせながら助けを呼ぶような大声を出してしまいました。大声と言っても、普段は蚊の鳴くような音しか洩らさぬ私の喉ですから、それは分厚い扉に遮られて…………外に届く事はありませんでした。
鷲鼻の人が私の胸を、まるで形を変えようとするみたいに揉みしだいて、先端をその親指の腹が擦る度に痛くて、痛くて。
その間に、バンダナの人が事もあろうに私の両足首を掴んで、大きく脚を開かせたのです。薄暗いのが唯一の救いでしたが、それでも恥ずかしくて私はついに泣き出してしまいました。しかし二人は手を緩めることはありませんでした。
「…ぅえ…もう……止めて下さ……きゃぁっ!!?」
大きく開かれた私の脚の間に割って入ったバンダナの人は、私の、誰にも見せたこともないような部分に顔を埋めてきたんです。そして、その汚い場所をぴちゃぴちゃと音を立てて舐め始めたんです。それに触発されたかのように胸を弄っていた方も私の胸の先端を舐めたり、吸い始めました。
何でこんなことをするのか全然分からなくて、私は混乱する鈍い頭を抱えてずっと厭だとすすり泣いていたような気がします。本当に厭で厭で堪りませんでした。
けれど、やはりその時の私はこのまま暫く我慢していれば一番早く開放の時が訪れるんだと思っていて、本気の抵抗は、やはり…………しませんでした。
「なぁー、ヒナタ様に口でして貰わね?」
「…そうだな。俺は胸でして貰いたいもんだ」
そう言うと、二人は私を正座のような格好にさせ、スパッツと下着を下ろして私の眼前に男の人の物を取り出して見せました。恥ずかしくて顔を逸らした私を無理やり其方に向かせて、鷲鼻の人はソレを下から私の胸の間に差し込んできました。
「何っ…」
「ほら、そのデカイ胸でこれを擦るんだよ!」
強い口調と大声で言われ、びくりと体を強張らせた私は、仕方なく言われた通り、胸を使ってソレを擦り始めました。
「俺のは咥えて貰おうかなぁ…?ねェ、ヒナタ様?」
差し出されたソレを、私は拒否することが出来ませんでした。
「…んぅ……ん…ぃ…」
咥えされられた物に嘔吐感と嫌悪を覚えながらも、私はこれが早く終わる事を願いながら懸命に奉仕を続けました。
「歯を立てるんじゃねぇよっ!」
怒鳴られて、瞳にいっぱいに涙を浮かべながら舌を使いました。
そのモノはビクビクと血管が浮き出ていて…ほんの小さい頃に見た同じ年の男の子のモノとはまるで違っていました。同じ器官だということも中々思い至りませんでした。
私はこの人達は物の怪が人の形を取っているんじゃないかとさえ、思ったのです。
「ヒナタ様の巨乳はきっとパイズリの為に在るんだろうなぁ?こんなに乳首堅くして、さ」
訳も分からなくて、只言われた通りに。
だけど舌先で先端を擦るとソレがますます硬くなったようで怖かった…です…
それからすぐに白濁が吐き出されました。
口腔内に吐き出され飲み切れなかったものが顔を汚し、殆ど同時に胸のモノも精を吐き出したのです。
胸と顔がとろりとした白いものに汚され、飲み切れなかったものが口から顎を伝って滴りました。
強烈な嘔吐感と青臭い苦味に私は顔を歪めて、ボロボロと涙を零すことしか出来ませんでした。
「何をしている」
その時、急にバタンと音を立てて扉が開け放たれ、逆光の中から鋭い声が響いたんです。
鮮烈なその声に私は思わず身を竦めました。
二人は弾かれたように後ろに下がって、寧ろ滑稽なほどに狼狽していました。
「…いや、その…これはですね…」
二人が何か言いかけた時に逆光の中の人は驚くほどの俊敏さで駆け出し、気付いた時には二人は地面に崩れ落ちていました。
そうでした。今日はあの人がお父上と共に宗家に訪れるということを、今の今まで私はすっかりと忘れていたんです。
それどころではありませんでしたから…
「ネ…」
私はその人の名前を最後まで呼ぶことはなく、言葉の途中でばさりと上から上着を掛けられました。
こんな姿を見られるに耐えなかった私は、ぎゅっとその上着で体を隠し、びくびくと怯えた瞳でその人を見上げました、が、その人はすでに踵を返していて、扉の所に居ました。
「気を付けてください…貴方は…………無防備すぎる」
その声を聞くだけで自分がどうしようもなく駄目で駄目で惨めで仕方がなかった私は、その言葉に喉が詰まりました。まるで鉛を押し込められたよう。
縋るような眼差しを思わず向けてしまう自分が厭でした……厭、です……
しかしそれだけ言うと、その人は私を残して行ってしまいました。
行ってしまいました。
独り残された私は、小さく泣きました。
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